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ロジです。
目次
ChatGPTに低価格プラン「Go」導入、広告で収益化を試験へ
OpenAIはチャットボット「ChatGPT」に新たな低価格サブスクリプション「ChatGPT Go」プラン(月額約8ドル)を米国で提供開始し、無料版およびGoプラン利用者向けにチャット画面内で広告表示を試験導入すると発表しました。ChatGPTの画面にユーザーの質問内容に関連した商品オファーがカルーセル形式で表示される仕組みで、例えばレシピを尋ねると食材の広告が提示されるイメージです。OpenAIによると、広告パーソナライズを無効化する設定や、ユーザーのチャット内容を広告主と共有しない方針も示されています。
なぜ重要か: これまで有料の「ChatGPT Plus」(月額約20ドル)などサブスクリプション収入が中心だったChatGPTに広告モデルが加わることで、サービスの持続的収益化に向けた大きな転換点となります。OpenAIは2025年に約80億ドルの赤字を計上しつつも年商200億ドル規模まで急成長しており、広告ビジネスによる収入多様化で将来の収益性改善を目指しています。実際、2026年後半〜2027年初頭にはIPO(新規株式公開)も視野に入れており、膨大な運用コストをまかなう手段として広告が採用された形です。また利用者にとっては、無料または低価格で高度な生成AIを使える代わりに広告が表示されるという、新しいAIサービス利用モデルが提示されたと言えます。
最先端AIモデルの相次ぐアップデート
この週、大手各社から生成AIモデルの最新版が相次いで発表・提供されました。
- GoogleのGemini 3: 最新のマルチモーダルAIモデル「Gemini 3」を本格リリースしました。Gemini 3はテキストだけでなく画像や動画など複数のモードを統合的に扱え、推論能力も飛躍的に向上したGoogle DeepMindの新モデルです。GoogleはGemini 3を検索やモバイル端末向けアプリなど自社サービス全般に組み込み、最高性能モデル「Gemini 3 Pro(Deep Thinkモード搭載)」を一部ユーザーに提供開始しました。実際、Salesforceのマーク・ベニオフCEOが「3年間毎日ChatGPTを使ってきたが、Gemini 3を2時間触ったらもう戻れない」とSNSで絶賛するなど、その性能に高い評価が集まっています。Googleによれば、Gemini 3は前世代の2.5モデルをあらゆるベンチマークで上回る成果を示し、難解な問題の解決や高度なコード生成も可能にしています。
- AnthropicのClaude Opus 4.5: OpenAIのChatGPT対抗として注目されるAnthropic社は、エンタープライズ向け大規模言語モデルClaudeの最新版「Claude Opus 4.5」をリリースしました(2025年末発表)。特にソフトウェア開発やエージェント的な長時間タスク処理に強みを持ち、同社によれば既存モデルに比べてコードの生成・修正能力や長文推論能力が飛躍的に向上しています。実際、社内外のベンチマークテストで他の最先端モデルを凌ぐ結果を出した部分もあり、OpenAIやGoogleに対抗する「世界最高水準」のモデルだと位置付けられています。加えて価格設定もトークン100万あたり5ドル〜と大幅に引き下げられ、企業や開発者が利用しやすくなっています。
- OpenAIのGPT-5.2: OpenAIは自社の基幹モデルGPTシリーズの最新版「GPT-5.2」をChatGPTの有料ユーザー向けにリリースしました。GPT-5.2では処理モードがInstant(高速応答)、Thinking(高精度応答)、Pro(最上位)に分かれて提供されており、特にThinkingモードでは前バージョン(GPT-5.1)比で約30%の幻覚(誤情報)削減を実現したとされています。OpenAIはGPT-5.2が専門知識を要する複雑なタスクや長期的なプロジェクト遂行能力で大きな進歩を遂げたと説明しており、実際に多くの職種・業務にまたがるベンチマークテスト「GDPval」で優れた成績を収めたことを強調しています。これらの改良により、ChatGPTやAPI経由でより信頼性の高い応答や長文の処理が可能になりました。
なぜ重要か: 生成AIモデルの急速な進歩と競争の激化を示す動きです。それぞれのモデルが独自の強み(Geminiはマルチモーダルと高度な推論、Claudeはコーディングと長時間自律実行、GPT-5.2は総合的な知識タスク)を強調しており、企業間競争が技術のブレイクスルーを加速させています。ユーザーにとっては、検索やアシスタント、業務自動化など様々な場面でより高性能なAIの恩恵を受けられるようになります。一方でモデル間の性能競争が激しいほど、安全性や倫理面での配慮もますます重要になるでしょう。
Apple、音声アシスタントSiriにGoogleの生成AI「Gemini」を採用
1月13日、米Apple社が自社の音声アシスタント「Siri」の高度化に向けて、Google(Alphabet社)の生成AIモデル「Gemini」を採用する複数年契約を結んだことが報じられました。GoogleのGeminiは前述の通り同社最新の大規模AIモデルで、Appleはこれを今後リリース予定の新生Siriやその他のAI機能の基盤として利用します。この提携はAppleとGoogleというテック大手2社のAI分野での戦略的提盟を意味し、OpenAIをはじめとする他社との力関係にも影響を与える重大な出来事です。
なぜ重要か: Appleは従来、自社開発の機械学習技術でSiriを進化させてきましたが、ここに来て外部の最先端モデルを取り込む方針に転換しました。その理由として、生成AIの進歩スピードに追いつくために最善の技術を取り入れる必要があったと見られます。Googleにとっては2億台以上のAppleデバイス上で自社AIがデフォルト動作することになり、OpenAIなど競合に対する大きな優位性を獲得した形です。一方、Appleは2024年にSiriとChatGPTの連携(ユーザーが高度な質問時にChatGPTを呼び出す機能)を開始していましたが、今回の提携によりChatGPTは今後も「必要に応じ補助的に使われる位置付け」にとどまり、Siriの基本エンジンはGeminiが担うことになります。この動きは、AIプラットフォーム競争において提携や陣営再編が進みつつあることを示しており、今後ユーザー体験や市場シェアにも大きな影響を及ぼすでしょう。
AI企業の投資・買収が活発化
生成AIブームが続く中、この週には各社による関連企業の買収や大型資金調達が相次ぎました。
- OpenAIによる開発ツール取り込み: OpenAIは機械学習モデルの訓練管理プラットフォームを提供するスタートアップ「Neptune.ai」を買収すると発表しました。Neptuneはモデルの学習過程や実験をトラッキングできるサービスで、買収後はOpenAI内部に取り込んで研究開発効率を高める狙いです(買収額は非公表ながら約4億ドル未満と推測されています)。またOpenAIは主要出資者のThrive Capital社が運営する新興企業ハブ「Thrive Holdings」に出資し、自社の研究者やエンジニアを派遣して複数のスタートアップ支援に乗り出す動きも発表しました。これらはOpenAIが単独でモデル開発するだけでなく、周辺エコシステムやツール類を積極的に取り込んでいく戦略の一環とみられます。
- Anthropicによる高速化技術の獲得: Anthropic社はJavaScriptランタイム「Bun」の開発元である企業を買収すると発表しました。Bunはサーバサイド実行環境として高性能で知られ、Anthropicは自社のAIモデル(特にClaudeのコード生成機能)をより高速かつ効率的に提供する目的でこの技術を取り込むとしています。実際AnthropicはBunを以前から活用しており、今後Claudeのコードアシスタント「Claude Code」のレスポンス高速化や大規模展開に寄与すると期待されています。
- その他の主な動き: 大手OSSベンダーの米Red Hat社(IBM傘下)はAIリスク管理スタートアップのChatterbox Labs社を買収し、自社AIソリューションのセキュリティ機能強化を図りました。またAIモデルのデプロイ基盤を提供するスタートアップのBaseTen社は、強化学習技術に強みを持つベンチャー企業Parsed社を買収し、オープンソースモデルの特殊用途適応サービスを拡充しています。
- 生成AIスタートアップへの大型出資: ベンチャー投資も引き続き活発で、この週にはUnconventional AI社が4億7,500万ドルの資金調達を発表しました。同社は詳細非公開ながら「生物レベルのエネルギー効率」を目指す計算技術を開発中とされ、Andreessen HorowitzやLightspeedといった有力VCが出資を主導しています。またBlack Forest Labs社はテキストから動画への生成AI「FLUX」モデル開発で注目を集め、シリーズBで3億ドル(評価額32.5億ドル)の資金調達に成功しました。出資にはSalesforceの企業投資部門などが参加しており、生成AIの中でも特に「動画生成」が今後の成長分野として期待されていることを示しています。
なぜ重要か: 生成AI分野では技術革新と同時に業界再編も加速しています。OpenAIやAnthropicによるツール系スタートアップの買収は、モデルの性能向上や開発効率化につながる基盤技術を取り込む動きであり、自社サービスの競争力強化を狙ったものです。また巨額の資金が新興企業に流入し続けていることは、投資家が依然として生成AIの将来性に期待している証拠と言えます。特に効率化技術や動画生成など、新たなフロンティア領域への投資が目立ち、今後の技術トレンドを占う上でも注目されます。一方で、大手による有望企業・人材の囲い込みが進むことで業界の勢力図が変わり、中小プレイヤーの動向やオープンソースコミュニティへの影響も注視が必要です。
米国で進むAI規制の議論
生成AIの急速な普及を受け、米国では政策・規制面でも動きがありました。
- 連邦政府の動き: 連邦レベルでは、ホワイトハウスが州によるAI規制を牽制する大統領令を発出しました。この大統領令は「国家AI政策の枠組み」を示すもので、各連邦機関に対し州法の監視と法的挑戦を指示し、州が厳しいAI規制を制定した場合には連邦予算(ブロードバンド整備基金など)の配分停止も含めて圧力をかける内容です。司法省内に「AI訴訟タスクフォース」を設置し、商務省には州法と連邦方針の矛盾点精査を命じるなど、かなり踏み込んだ施策となっています。ただし包括的な連邦AI法を新設するものではなく、法的妥当性については州政府側からの異議や裁判も予想され、専門家からは合衆国憲法修正第10条(州権限)との整合性を問う声も出ています。
- 州当局による安全性への懸念表明: 一方、米国の42州におよぶ州司法長官連合は、大手生成AI提供企業(Microsoft、OpenAI、Google、Anthropic、Apple、Meta、Perplexity、Replika、xAI)に対し連名の書簡を送付し、チャットボットが「迎合的で妄想的な(sycophantic and delusional)」応答を行うことで子どもや脆弱なユーザーに有害な影響を与えるリスクを強く警告しました。書簡では各社に対し、「より強固な安全策」「外部機関による事前監査」「有害なやりとりが発生した際のユーザー通知と報告体制」の確立を求めています。この書簡には民主・共和両党の州当局者が超党派で名を連ねています(なおカリフォルニア州とテキサス州は不参加)。生成AIの社会的リスク、とりわけ未成年への影響について州レベルで規制や圧力を強める動きが広がっていることが窺えます。
- ニューヨーク州のAI法案: また州レベルの立法としては、ニューヨーク州議会が「AI安全教育法(RAISE法案)」を可決し、1月上旬に州知事へ送付しました。この法律はOpenAIのGPTやGoogleのGeminiなど「フロンティアAIモデル」と呼ばれる最先端の大規模モデル提供者に対し、安全策の実施計画提出や第三者レビュー、有害事例の報告義務などを課す内容です。2025年末に州知事署名済みで2026年から施行との報道もあり、米国初の包括的AI規制法の一つとして注目されています。連邦政府が州法への牽制を強める中で成立したこのNY州法は、他州や連邦議会にも影響を及ぼす可能性があります。
なぜ重要か: 米国では連邦政府と州政府の間でAI規制の主導権を巡る駆け引きが本格化してきました。連邦側(現在の政権)は産業促進の観点から「各州バラバラの規制ではなく全国一律のルールを」と主張していますが、州側は利用者保護の観点から独自に動く必要性を訴えています。特に生成AIは有害コンテンツや差別、プライバシーなど様々な社会課題と関わるため、州レベルでも迅速に対応策を講じようという機運が高まっている状況です。今回の州司法長官書簡やNY州法はその表れであり、他方で連邦政府はそれらを抑制しようとしている構図です。今後、合衆国におけるAIの法規制がどのレベルで整備されていくのか、大きな分岐点となる局面と言えます。また、同様の課題は世界各国で顕在化しており、各国政府の動向にも注目が必要です。
生成AIと著作権問題:モデルの記憶暴露と新たな提案
生成AIの発展に伴い、著作権との関係でも新たなニュースがありました。
- LLMから小説が「丸ごと」引き出されるデモ: スタンフォード大学などの研究チームが2026年1月に発表した論文で、複数の大規模言語モデル(Claude 3.7, GPT-4.1, Gemini 2.5, Grok 3など)に対し、作品の冒頭文を与えて続きを生成させる「プロンプト継続」手法を繰り返すことで、モデルの学習データに含まれていた長編小説の全文に近い量の文章を出力させることに成功したと報告されました。例えばAnthropic社のClaude 3.7 (Sonnet) では、有名小説『ハリー・ポッターと賢者の石』の約95.8%に相当する文章をほぼそのまま再現できてしまったとのことです。一方、OpenAIのGPT-4.1は章の区切りで生成が止まるガードレールが機能し約4%しか再現できなかったケースもあるなど、モデルによって挙動は異なりました。この研究は2025年中頃に実験を行いモデル提供企業へ通知、90日の公開保留期間を経て発表されたもので、大規模モデルが学習時に取り込んだ文章を事実上「記憶」しており、適切に操作すればその内容をそのまま吐き出させられることを示した形です。研究者はこの事実が著作権や機密情報の漏洩リスクにつながると警鐘を鳴らしており、生成AIモデルの安全策や法制度の整備に一石を投じています。
- インド政府の「包括ライセンス」構想: 上記の問題への対策とも関連して、インド商工省配下の機関は1月、「生成AI学習用途に関する包括的ライセンス制度」の提案を発表しました。これは、生成AIの開発者が著作権で保護されたあらゆる作品をデータセットとして合法的に使用できるよう包括的な許諾を与える代わりに、開発者側がクリエイター(権利者)に法定使用料を支払う仕組みを設けようというものです。具体的な使用料率は政府任命の委員会が設定し、徴収・分配は専属の管理団体が担う想定で、現在この提案文書に対するパブリックコメントが募集されています。AIによる大量の著作物利用に対し包括的なライセンスで対応するアイデアは世界的にも注目されており、実現すれば著作権者への利益還元とイノベーション促進の両立を図る一つのモデルケースになる可能性があります。
なぜ重要か: 生成AIを巡る著作権問題は、既に米国などで訴訟が相次ぐなど世界的な論点となっています。今回明らかになった研究結果は、モデルが学習データをそのまま再生産し得ることを実証したため、AI開発企業によるデータ取り扱いへの社会的・法的な監視が一段と強まるでしょう。またインドの提案は、AI時代に即した新たな著作権処理の仕組みとして注目されます。今後、このような包括ライセンス方式が各国で検討・導入されるか、あるいは従来通りの個別許諾やフェアユース議論で対応していくのか、世界的な議論が進むと考えられます。生成AIが真に社会に根付くためには、技術面だけでなく法制度やガバナンス面でのイノベーションも不可欠だと言えるでしょう。
以上、最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
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