ノイズの多いAIの世界から、未来を読み解くシグナルを。
ロジです。
ここ最近のテックニュースを眺めていて、ふと不思議に思うことはありませんか?
「あれ、インドの名前が出てこないな」と。
OpenAIがGPT-4で世界を揺るがし、Googleや中国勢が必死に食らいついている。
そんな激動の最中、あIT大国インドが、不気味なほど静まり返っています。
「もしかして、AIの波に乗り遅れた?」
普通ならそう思いますよね。でも、現地の詳細なレポートを紐解いていくと、全く逆の事実が見えてきました。
彼らは乗り遅れたのでも、負けたのでもありません。
「こんな消耗戦、まともに付き合ってられるか」と鼻で笑って、別のルートを全速力で走っているんです。
今回は、このインドの「沈黙」の裏にある、ゾッとするほど合理的な生存戦略についてお話しします。
この記事は、こんな人に向けて書いています。
- 「インド=安い開発拠点」という古いOSで思考が止まっている経営者
- 「優秀なAIエンジニアがどこにもいない」と頭を抱えている人事担当者
- ニュースの表層ではなく、ドロドロとした国家戦略のリアルを知りたい人
なぜ彼らは戦わないのか。その「賢すぎる選択」を一緒に解剖していきましょう。
「ギャンブルはしない」という鉄の意志

まず、TCS(タタ・コンサルタンシー・サービシズ)やインフォシスといったインドの巨大企業たちが、なぜGPT-4みたいな基盤モデルを作らないのか。
これ、「技術力がないから作れない」のではありません。
彼らは「作らない」と固く決めているんです。
想像してみてください。
あなたが経営者だとして、数千億円かけてGPUを買い集め、何年もかけてAIを開発したとします。でも、リリースした瞬間にGoogleからもっとすごい無料のモデルが出るかもしれない。
そんなの、ビジネスじゃなくてただのギャンブルですよね?
インドの彼らは、商売の天才です。
「金になるか分からない発明競争」なんてハイリスクな遊びは、アメリカのビッグテックに任せておけばいい。彼らが選んだのは、「誰かが作った最強のAIを使って、顧客のシステムを直してあげる」という、地味だけど絶対に儲かるポジションです。
ゴールドラッシュで一番儲けたのは、金を掘った人じゃなくて、ツルハシとジーンズを売った人だった。
インド企業は現代において、平然とジーンズを売っているわけです。この冷徹なまでのリアリズム、正直しびれませんか?
余談ですが、あるインド通の友人が言っていました。「彼らはリスクを計算するんじゃない、避けるんだ」と。まさにその通りの動きです。
突然、国が本気を出してきた
でも、ここで終わらないのがインドの底知れないところ。
「民間は儲からないからやらない」で済ませると、国としてAIの技術力が空っぽになってしまう。アメリカに生殺与奪の権を握られるようなものです。
そこで出てくるのが、インド政府です。
2024年、「IndiaAI Mission」という計画で、ドカンと約1037億ルピー(1800億円くらい)を突っ込んできました。
「民間がやらないなら、俺たちがやる」
この割り切り方が凄まじい。
民間企業は金儲けに走り、政府は安全保障のために自前のAIを作る。
日本だと「官民一体で〜」とか言って、全員で同じ方向を向こうとしがちじゃないですか?(あ、言っちゃった)
インドは役割分担が明確なんです。
「金儲け」と「国のプライド」。この二つを混ぜずに、別々のプレイヤーが担う。
まるでDNAの二重螺旋みたいに、互いに干渉せずに上昇していく構造を作っているわけです。
これを知った時、思わず唸ってしまいました。
彼らは何一つ、諦めてなんかいなかったのです。
「論文はいらない、動くコードをくれ」

この環境が、とんでもない人材を生み出しています。
インドの学会発表とかを見ていると、面白いことに気づきます。
「新しいAIの理論を考えました!」みたいな基礎研究は案外少ない。その代わり、「AIを使って農業用水を最適化しました」「遠隔医療アプリ作りました」みたいな、実装・応用の話ばっかりなんです。
これもまた、理にかなっていますよね。
企業が求めているのは、「美しい数式を書く研究者」じゃなくて、「ガタガタ言わずにAIを業務システムに組み込めるエンジニア」なんですから。
世界中が「AI人材がいない!」と叫んでいる中、インドだけは「使う側」のプロフェッショナルを工場のように量産している。
彼らは発明家じゃないかもしれない。でも、間違いなく最強の現場監督です。
まとめ:日本はどう動く?
さて、この事実を踏まえて、日本企業はこれからどう動くべきなんでしょうか?
「日本独自のLLMを作るぞ!」と意気込むのもいいですが、正直、周回遅れのレースに参加するのはしんどくないですか?
この記事で言いたかったことはシンプルです。
- インドは遅れてない。あえて「作らない」道を選んで、実利を独占しようとしてる。
- 民間はビジネス、政府はインフラ。この使い分けがエグい。
- 彼らが育てているのは、今一番欲しい「実装できるエンジニア」。
僕らがやるべきは、インドに対抗心燃やして張り合うことじゃない。
プライドを捨てて、彼らの「実装力」を借りることです。
「アイデアはあるけど、形にできる人がいない」
そう嘆いている暇があったら、インド行きのチケット取って、彼らと握手してきた方が早いかもしれませんよ。
僕は割と本気で、そう確信しています。
最後まで読んでくれて、ありがとう。
あなたのビジネスに、少しでも「シグナル」が届きますように。
当メディア「AI Signal Japan」では、
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運営者は、ロジ。博士号(Ph.D.)を取得後も、知的好奇心からデータ分析や統計の世界を探求しています。
アカデミックな視点から、表面的なニュースだけでは分からないAIの「本質」を、ロジカルに紐解いていきます。


