ノイズの多いAIの世界から、未来を読み解くための本質的な「シグナル」をあなたに。
ロジです。
企業や行政への導入が進むGoogle Workspace。
その中核AIである「Gemini」と「NotebookLM」は、現場でどう受け入れられているのでしょうか。
今回、キーマンズネットが217名のビジネスパーソンを対象とした調査(2025年10月実施)を実施しました。
このデータから、AI活用の「現在地」を示す、非常に明確なシグナルが検出されました。
本記事では、この調査結果を基に、AIが「どの業務の工数を削減したか」という核心部分をロジカルに分析します。
この記事は、次のような方へ向けて書きました。
- Google Workspace導入済みだが、AI機能の活用に踏み切れていない方
- 他社製AIアシスタントとGoogleのAIを比較検討している担当者の方
- NotebookLMの具体的な活用法と効果を知りたい方
データに基づき、AI活用の「次の一手」を考察します。
目次
シグナル①: Workspace環境がAI利用を加速させる

まず、AIの利用状況です。
調査対象全体では「無料版Gemini」の利用が40.1%でした。
多くの人が、個人レベルでAIの性能を試していることが分かります。
しかし、Google Workspaceを利用している層に限定すると、状況は一変します。
Geminiの利用率は 72.6% に急上昇。
リサーチ特化型のNotebookLMでさえ51.6%と、過半数が業務で利用していました。
AI機能が業務ツールに組み込まれている環境が、AIの利用率を劇的に引き上げている事実が明確になりました。
シグナル②: GeminiとNotebookLM、それぞれの「強み」への明確な評価

利用率の高さに加え、満足度も非常に高い数値を示しました。
「満足」「まぁ満足」の合計値は、Geminiで90.3%、NotebookLMで79.6%に達しています。
高評価の理由は、それぞれのツールの「本質的な強み」を反映しています。
Gemini:進化の速さと「Gems」による最適化
Geminiの満足度は90%を超えます。
フリーコメントからは、回答精度以外に2つの評価軸が見えてきました。
- 進化と連携: 「常に細かいバージョンアップがある」「Googleの多機能と連携していて楽しい」という声。AIが日々進化し、業務に溶け込む様子を評価しています。
- 「Gems」のカスタマイズ性: 自分専用のチャットbot(Gem)を作れる機能です。AIを「汎用ツール」から「特定業務に最適化されたアシスタント」へ変えられる点が、プロの利用者に支持されています。
NotebookLM:「ハルシネーションの少なさ」という信頼
対照的に、NotebookLMの評価ポイントは「信頼性」に集約されます。
「精度が高い」「ハルシネーションが少ない」
「資料にない内容は追加で調べるように促すコメントが入る」
NotebookLMは、アップロードした資料のみを情報源(ソース)として回答する設計です。
このアーキテクチャが、ビジネス利用で致命的となる「AIの嘘(ハルシネーション)」を構造的に抑制しています。
【ロジの視点】

研究や分析において、AIが「知らない」ことを「知らない」と認め、ソース(根拠)を明示する能力は、回答の流暢さより遥かに価値があります。NotebookLMが評価される本質は、この「誠実さ」にあると分析します。
シグナル③: AIを使わない理由「利用目的が不明確」
一方で、Workspaceを利用していてもAIを使わない層(2〜3割)も存在します。
その理由は「使い方が分からない」「利用目的がよく分かっていない」という回答に集約されました。
高機能なツールが提供されても、それを「自身のどの業務に適用すれば効果が出るのか」という具体的なユースケースが現場に浸透していない。
組織全体での活用には、この「目的の明確化」が次の課題であることを示しています。
【本題】AIが削減した業務工数 トップ3
では、AI活用層は、どの業務で「工数削減」の効果を最も実感しているのでしょうか。
「週当たり1時間以上の工数削減効果を得られた」と回答した割合が多かったタスク、トップ3を見ていきます。
第3位:データ分析 (41.0%)
最も注目すべきシグナルが、第3位の「データ分析」です。
これは、Microsoft 365 Copilotに関する同様の調査と比較しても、際立った特徴です。
この結果は、NotebookLMの活用が進んでいることを強く示唆しています。
大量のPDFレポートや資料を読み込ませ、
「このデータセットから○○の傾向を抽出して」
「AとBのレポートを比較し、相違点をリストアップして」
といった、従来は人間が時間をかけていた分析作業をAIに代替させています。
第2位:アイデア生成 (43.3%)
第2位は「アイデア生成」です。
これは「Gemini(チャットbot)」の活用が中心でしょう。
企画案、記事の構成案、キャッチコピー。
ゼロからイチを生み出すプロセスで、Geminiは強力な「壁打ち」相手となります。
人間一人の思考では出ない視点を提供し、ブレインストーミングの初速を劇的に上げています。
第1位:文章、資料作成支援 (49.3%)
第1位は「文章、資料作成支援」でした。
活用層の約半数が、この領域で週1時間以上の時間短縮を実感しています。
主な利用シーンは以下の2つです。
- Google ドキュメント (43.1%): 長文の要約、文章のリライト、ゼロからの下書き作成。
- Gmail (35.4%): メールの下書き作成、受信内容に基づく返信の提案。
日々の細かなコミュニケーション業務が、着実にAIによって効率化されている実態が読み取れます。
KEY SIGNAL:
AIは「会議の自動化(Copilot)」だけでなく、「分析の自動化(NotebookLM)」という新たな領域で、明確に工数削減効果を発揮し始めている。
まとめ:AI活用のシグナルは「分析」へ
今回の調査結果から、Google Workspace環境におけるAI活用の明確なトレンドが読み取れました。
この記事のポイントをおさらいしましょう。
- Workspace環境はAI利用率を加速させ、Geminiは72.6%、NotebookLMは51.6%に達している。
- Geminiは「進化とGems」、NotebookLMは「ハルシネーションの少なさ(信頼性)」が評価されている。
- 工数削減効果(週1時間以上)のトップ3は「文章作成支援」「アイデア生成」、そして「データ分析」。
- 特に「データ分析」での工数削減は、NotebookLMの特性が活かされた結果であり、AI活用の新たなスタンダードになる可能性を示している。
Microsoft 365 Copilotが「会議」や「議事録」といった日常業務の自動化で効果を発揮する一方、Google WorkspaceのAI、特にNotebookLMは「データ分析」や「リサーチ」という、より専門的な知的作業の領域で効率化を実現しています。
このシグナルは、AI活用の焦点が、定型業務の自動化から「分析業務の支援」へと移りつつあることを示しています。
以上、最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
当メディア「AI Signal Japan」では、
ノイズの多いAIの世界から、未来を読み解くための本質的な「シグナル」だけを抽出し、分かりやすくお届けしています!
運営者は、ロジ。博士号(Ph.D.)を取得後も、知的好奇心からデータ分析や統計の世界を探求しています。
アカデミックな視点から、表面的なニュースだけでは分からないAIの「本質」を、ロジカルに紐解いていきます。


