ノイズの多いAIの世界から、未来を読み解くための本質的な「シグナル」をあなたに。
ロジです。
Microsoftは、Edgeブラウザに搭載されている「Copilotモード」の大型アップデート(Copilot Fall Release)を発表しました。今回のアップデートで最も注目すべき機能は、AIがユーザーの代わりにブラウザ操作を実行する「Copilot Actions」です。
これまでAIアシスタントの多くは、情報の検索や要約が主な役割でした。しかし、Copilot Actionsの登場により、AIはユーザーの指示に基づき、ブラウザ上で複数ステップにまたがる複雑なタスクを能動的に実行する「エージェント」として機能し始めます。本記事では、このCopilot Actionsの具体的な機能、使い方、そして「Journeys」といった同時発表された新機能が、私たちのブラウザ利用にどのような変化をもたらすのかを、情報を整理し分析します。
この記事は、次のような方へ向けて書きました。
- Microsoft Edgeの最新AI機能に興味がある方
- 「Copilot Actions」の具体的な機能と使い方を知りたい方
- AIによるブラウザ操作の自動化が、どの程度のレベルまで来ているかを確認したい方
ブラウザが単なる「閲覧ソフト」から「実行可能なパートナー」へとどう変わるのか、その本質的なシグナルを読み解いていきましょう。
目次
Copilot Actionsとは:指示で動くAIエージェント
「Copilot Actions」は、Microsoft Edgeに搭載されるAI機能であり、ユーザーが自然言語(音声またはチャット)で指示を出すことにより、AIがブラウザ上で複雑なタスクを自動で実行するものです。

従来のAIチャットが「情報を提供する」存在だったのに対し、Copilot Actionsは「実際に行動する」存在へと役割を拡大しています。ユーザーの指示を受け、AIがブラウザを制御し、必要なページを開き、クリックや入力といった手続きを代行します。
具体的な使用例
提供された情報によれば、Copilot Actionsは以下のようなタスクを実行できるとされています。
- メール管理: 「メールの受信トレイを調べて、ショッピング関連のニュースレターの購読を解除して」
- オンライン予約: 「(特定の条件を指定して)レストランを予約してもらう」
- 情報検索と計画立案: 「ホテルの近くにある美術館を巡るウォーキングツアーを計画して。ルートに戻ることなく、9時に開始して各所に1時間ずつ滞在したい」
- フォーム入力の支援
これらの例は、従来であればユーザー自身が複数のWebサイトを訪問し、情報を比較検討しながら手動で行っていた作業です。Copilot Actionsは、これら一連のプロセスを自然言語の指示一つで自動化しようとしています。
Copilot Actionsの使い方とユーザー制御
Copilot Actionsは、ユーザーの利便性を高めると同時に、操作の透明性と制御を重視しています。
- 指示の方法: ユーザーはEdgeのCopilotインターフェース(サイドバーなど)から、チャットまたは音声でタスクを指示します。
- 実行の可視化: AIがアクションを実行中、リスニング中、または閲覧中である場合、ユーザーがその状態を把握できるよう、明確な視覚的合図が表示されます。
- 個人情報の取り扱い: Microsoftサポートによれば、タスクの実行に個人情報や支払い情報の入力が必要な場合、Copilotはユーザーに入力を促し、ユーザー自身がタブを制御して入力します。Copilotがこれらの情報を保存することはありません(ただし、Edgeブラウザ自体の自動入力機能によって保存される場合はあります)。
- 許可設定: Webサイトに対する操作許可は、ユーザーが「常に許可」「1回だけ許可する」「Cancel(拒否)」から選択でき、制御権は常にユーザー側にあります。
Journeys:中断した作業をシームレスに再開
今回のアップデートでは、「Journeys」という機能も発表されました。これは、Copilotモードの「コンテキストメモリ機能」として動作します。

Journeysは、ユーザーが過去に取り組んでいたブラウジングプロジェクト(例:旅行の計画、特定のテーマのリサーチなど)を、AIが自動的にトピックごとにグループ化します。
これにより、ユーザーは多数のタブを開いたままにしておく必要がなくなります。作業を中断した後でも、Journeys機能を通じて関連する情報群に素早くアクセスし、AIが提案する「次のステップ」を参考にしながら、シームレスに作業を再開できます。
【ロジの視点】

Copilot ActionsとJourneysの組み合わせは重要です。Actionsが「タスクの実行」を担うのに対し、Journeysは「タスクの文脈(コンテキスト)」を記憶します。AIがユーザーの過去の行動文脈を理解した上で、次のタスクを実行できるようになるため、より精度の高い支援が可能になります。これは、AIが単発の命令に応えるだけでなく、継続的なプロジェクトパートナーへと進化する可能性を示しています。
パーソナライゼーションの強化とプライバシー
新機能として、ユーザーのブラウジング履歴を活用したパーソナライゼーションの強化も含まれます。
これはオプトイン(ユーザーの明示的な許可)方式であり、ユーザーが許可した場合にのみ、Copilotは閲覧履歴にアクセスします。これにより、「先週見ていた商品の詳細を教えて」といった過去の行動に基づく質問への回答や、ユーザーの映画の好みやショッピング履歴に基づいた、より精度の高い推薦(レコメンド)が可能になります。
この機能も、Copilotモードの設定画面(edge://settings/ai)からいつでもオン/オフを切り替え可能です。
日本での利用と今後の展望
Copilot ActionsおよびJourneysは、現在米国で限定プレビューとして提供されています。日本国内のユーザーは、現時点ではウェイトリストへの登録が可能となっています。
なお、Copilotモード自体は日本でも既に利用可能であり、AIによるタブのグループ化、GPTモデル(Impress WatchによればGPT-5)によるCopilotへの質問、リアルタイム翻訳、ビデオの要約、画像生成などが提供されています。
KEY SIGNAL:
Copilot Actionsの登場は、ブラウザの役割が「情報へのアクセス手段」から「タスクを処理・実行するプラットフォーム」へと具体的に移行し始めたことを示す重要なシグナルです。
まとめ:ブラウザの役割を再定義するCopilot Actions
本記事では、Microsoft EdgeのCopilotモードに追加された新機能、特に「Copilot Actions」に焦点を当てて分析しました。AIがユーザーの指示に基づき、ブラウザ操作を代行するというアプローチは、今後のウェブ利用のあり方に大きな影響を与える可能性があります。
この記事のポイントをおさらいしましょう。
- Copilot Actionsは、AIが自然言語の指示でメール購読解除や予約など、複数ステップのタスクを自動実行する新機能です。
- Journeysは、過去の作業履歴をトピック別に自動整理し、中断したプロジェクトの再開を支援します。
- AIによる操作は、視覚的な合図によって透明性が確保され、個人情報の入力時はユーザーが介入するなど、制御権は常にユーザーにあります。
- これらの新機能は現在米国で限定プレビュー中であり、日本ではウェイトリストへの登録が可能です。
AIが情報の検索・要約から、さらに一歩進んで「実行」を担い始めることで、ブラウザは私たちのデジタルライフにおいて、より能動的で強力なパートナーとなることが期待されます。
以上、最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
当メディア「AI Signal Japan」では、
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アカデミックな視点から、表面的なニュースだけでは分からないAIの「本質」を、ロジカルに紐解いていきます。

